「歯磨きをすると歯ブラシに血がつく」
「朝起きたとき口の中がネバネバする」
「以前よりも歯が長くなったように感じる」。
これらは歯周病が静かに進行しているサインかもしれません。
歯周病は痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行するため、「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれています。症状に気づいたときには、すでにかなり進行してしまっているケースも少なくありません。
実は、日本の成人の多くが罹患しているといわれるほど、歯周病は誰にとっても身近な病気です。そして虫歯を抜いて、日本人が歯を失う最大の原因となっています。
大切な歯を一本でも多く守り、生涯にわたってご自身の歯で食事や会話を楽しむために、堺東Mデンタルクリニックは歯周病の早期発見と根本的な治療、そして再発させないための予防に全力で取り組みます。
歯周病は、歯そのものではなく歯を支える周りの組織(歯肉や歯槽骨など)が、歯周病菌によって破壊されていく感染症です。お家も土台がしっかりしていなければ傾いてしまうように、歯も土台となる骨が溶けてしまえば、やがてグラグラになり最終的には抜け落ちてしまいます。
歯周病の直接的な原因は、お口の中に溜まった「歯垢(プラーク)」です。歯垢は単なる食べかすではなく細菌の塊であり、わずか1mgの中に数億個もの細菌が生息しています。この歯垢が歯磨きで十分に除去されないまま時間が経つと、唾液中のミネラルと結びついて石のように硬い「歯石」に変わります。
歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなり歯周病菌の温床となります。歯石は歯磨きでは取り除くことができないため、歯科医院で専門的な器具を使って除去する必要があるのです。
歯周病は、お口の中だけの問題にとどまりません。歯周病菌や菌が作り出す毒素が歯茎の血管から体内に入り込み、血液の流れに乗って全身を巡ることで、様々な病気を引き起こしたり悪化させたりする危険性が指摘されています。
歯周病は、糖尿病の「第6の合併症」ともいわれています。歯周病菌の毒素が血糖値を下げるインスリンの働きを妨げるため、血糖コントロールが難しくなります。逆に糖尿病の人は免疫力が低下しやすく、歯周病が悪化しやすいという相互に悪影響を及ぼしあう関係にあります。
歯周病菌が血管内で血の塊(血栓)を作りやすくすることが分かっており、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。
ご高齢の方に特に注意が必要なのが、誤嚥性肺炎です。唾液に含まれる歯周病菌が食べ物や飲み物と一緒に誤って気管に入ってしまうことで、肺に炎症を引き起こします。
妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、早産や低体重児出産のリスクが高まることが報告されています。生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中の口腔ケアは非常に重要です。
お口の健康は、全身の健康を守るための入り口です。私たちは歯周病治療を通じて、患者様の健やかな毎日を支えていきたいと考えています。
歯周病は、その進行度によって大きく4つの段階に分けられます。早期に発見し、適切な治療を開始することが歯を守るための鍵となります。
歯周病の初期段階です。歯茎にのみ炎症が起きており、歯を支える骨の破壊はまだ始まっていません。
主な症状
治療法
この段階であれば、歯科医院での徹底したクリーニング(スケーリング)と毎日の正しい歯磨きを実践することで、健康な歯茎を取り戻すことが可能です。
炎症が歯茎の奥へと広がり、歯と歯茎の境目にある溝(歯周ポケット)が深くなり始めます。歯を支える骨も少しずつ溶け始めています。
主な症状
治療法
歯の表面や歯周ポケットの浅い部分に付着した歯石を、専門の器具(超音波スケーラーやキュレット)を使って除去する「スケーリング・ルートプレーニング」を行います。これは歯周病治療における最も基本的な治療です。
歯を支える骨の破壊がさらに進み、歯が少し揺れ始めます。歯周ポケットも4〜6mm程度まで深くなり、歯石が歯の根の深い部分にまで付着しています。
主な症状
治療法
軽度歯周炎と同様に、まずはスケーリング・ルートプレーニングで徹底的に歯石を除去します。それでも改善が見られない深い歯周ポケットに対しては、外科的な治療を検討することもあります。
歯を支える骨が半分以上失われ、歯は大きくグラグラになります。歯茎からは膿が出たり、口臭もかなり強くなったりします。
主な症状
治療法
基本的な治療では改善が難しく、「歯周外科治療」が必要となります。それでも歯の保存が困難と判断される場合は、残念ながら抜歯を選択せざるを得ません。抜歯後は、インプラントやブリッジ、入れ歯などの方法で失われた機能と見た目を回復させる治療計画を立てていきます。
歯周病は、歯科医師と患者様が二人三脚で向き合っていく必要のある病気です。私たちは患者様が諦めることなく治療を続けられるよう、精密な診断と丁寧な治療、そして心に寄り添うサポートを大切にしています。
効果的な治療は、現状を正確に把握することから始まります。当院では客観的なデータに基づいて、的確な診断と治療計画の立案を行います。
歯周ポケットの測定
「歯周ポケットプローブ」という専門の器具を使い、一本一本の歯について歯周ポケットの深さを丁寧に測定し、歯周病の進行度を記録します。
レントゲン撮影
目では見ることのできない、歯を支える骨の状態を「デジタルX線」で撮影します。これにより、骨がどの程度失われているかを正確に把握できます。
口腔内カメラでのご確認
「口腔内カメラ」を使用し、ご自身のお口の中の状態をモニターに映し出します。歯石が付着している様子や歯茎の炎症などを目で見ていただくことで、治療の必要性をご理解いただきモチベーションを高める一助としています。
歯周病治療の根幹をなすのが、原因である歯垢と歯石を徹底的に取り除く「歯周基本治療」です。この治療の精度が、歯の未来を大きく左右します。
当院では専門的な知識と技術を持った歯科医師・歯科衛生士が、責任を持って施術にあたります。「超音波スケーラー」で大まかな歯石を効率よく除去した後、「歯肉キュレット」という手用の器具を用いて、歯周ポケットの奥深くや歯の根の複雑な形態に付着した歯石を一つひとつ丁寧に取り除いていきます。
また、必要に応じて「レーザー機器」を併用します。レーザーを歯周ポケット内に照射することで、ポケット内を殺菌し歯茎の炎症を和らげ、治癒を促進する効果が期待できます。
基本治療だけでは改善が難しい深い歯周ポケットが残った場合には、「歯肉剥離掻爬術(フラップ手術)」という歯周外科治療を行います。これは麻酔をした上で歯茎を切開し、歯の根を直接目で確認しながら取り残した歯石や感染した組織を徹底的に除去する手術です。
「手術」と聞くと怖いイメージを持たれるかもしれませんが、歯を救うための非常に有効な手段です。もちろん、虫歯治療と同様に痛みを最大限に抑える麻酔を行い、患者様の負担を軽減できるよう細心の注意を払って進めますので、ご安心ください。
歯周病は、高血圧や糖尿病と同じ「生活習慣病」の一つであり、治療が完了しても油断すると再発しやすい病気です。治療によって取り戻した健康な状態を長く維持するためには、治療後の定期的なメンテナンスが欠かせません。
ご自身のブラッシングだけでは落としきれない汚れを、歯科医院で定期的にクリーニング(PMTC)することで歯周病の再発を効果的に防ぎます。患者様のお口の状態やブラッシングの癖に合わせた歯磨き指導も行い、ご自宅でのセルフケアの質を高めるお手伝いをします。
お口の健康パートナーとして、皆様の人生に長く寄り添っていけることを願っています。
歯茎からのサインを見逃さず、どうぞお気軽に私たちにご相談ください。